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Posted by あしたさぬき.JP at

2015年06月25日

逅里苑Life  コミュニケーション

食堂で、ある利用者の方と目が合った。
その方は少し小柄で、車いすに少し浅く腰かけもたれかかるように座り、
自分で車椅子を手と足でゆっくりと動かしながら、フロアを行き来していた。


私は膝を折り、相手の目線より少し低い高さにしゃがみこんだのだが、
その度に、”介護”が染みついているなぁ・・・、と感じる。
私がもし椅子や車いすで座っている時、しゃがんで下から話されるとどう思うだろう。
あまり印象は良くない気がする。
多分、「この若僧が!年寄り扱いするな!」とか言いたくなる。

ふとそんなことに勝手な疑問を抱きながら、
「こんにちは」
と、目を見て声をかけた。


その方からの返答はなかった。
聞こえなかったのかな?、と思いながら返事がなかったことを焦りつつ再び言葉をかける。

「こんにちは、お加減いかがですか?」


お加減とか何の加減なのか良く分からない。
話す言葉に焦った時、よくそんな言葉が飛び出てくることがある。
自然体でいいのに、初めて話しかける時には教科書のようなセリフを選んでいる自分が居て、
ちょっと可笑しくなってしまった。


そんな自分ツッコミをするを私をよそに、その方の表情の動きや返事はないまま。
うーん、コミュニケーションが難しいな・・・と思いながら、ふとその方の首元に目をやった。


「あれ、服のボタンがはずれとるよ~。」



そう指摘して、私が手を伸ばそうとするその前に、その方は自分でボタンに手をかける。
ゆっくり、ゆっくり、ひとつずつ。
手は震え、ボタンを掴むことさえも難しそうに見えるが、時間をかけて、ゆっくりと。


正直私は、自分でボタンをとめるのは難しいのではないかな、と思い、
手伝うタイミングをじっと待っていた。
決して短くはない時間だったと思う。
しかし、私の助けが必要な様子は、見受けられなかった。

ああ、失礼なことを思ってしまったな、と考えていると、少し違和感。
良く見ると、2段目と3段目のボタンを掛け違えていたのだ。
あら、と同時に気づき、いそいそとはずしてかけなおされ始める。
ほどなくして、きちんと襟もとがしっかりした、ポロシャツとなった。


「ああ、よかった。その方がピシっとして良いですね!」


照れくさいような、はにかんだような表情で、その方は笑った。
なんとなく、ほんの少しでも心が通じ合うことができたのだろうか。
印象や話をした感触だけで、壁を作っているのはいつも自分。
相手を知るためには、自分を知らなきゃならない。
そんな風なことを、考えさせられる。



言葉だけじゃない、コミュニケーション。
自分が持っている、先入観の浅はかさ。
何でもないこの瞬間に、様々な思いを巡らせる。
ちょっとしたひとときに、今日も、ありがとう。  
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Posted by 守里会 at 22:42Comments(0)つぶやき