2015年06月01日

畳と過ごす

廊下を歩いていると、奥から何やら風が吹いてきた。
気になって奥へ進んでみると、
そこには布団があるのに全く使おうとせず、居室で畳に横になっている方がおられた。
車いすで移動していた方なので、まさか自分で戻れず大変なのでは、と思い、尋ねてみる。

畳と過ごす


「どしたん、大丈夫? 布団に上がる?」 

「ええ、ええ」

「でもそこにおったら痛いやろー。」

どうしても気になってしまう私は、お節介を焼いてよいしょと布団に移動してもらう。


「ありがとうで、私らは畳に寝るんがなれとるけんな。
 昼間から布団にはいっとるほうが落ち着かんで」

なるほど・・・と納得。
そもそも、ちょっと部屋で休むからといって布団を敷かなければならない道理はない。
部屋には畳しかないので、なんとなく気を遣って、
布団みたいなものを敷いたほうが居やすいかな、と考えて広げたのだろうが、
自分の家ではいちいち布団なんて敷かないし、ちょっと変な感じではある。
よくよく考えたら枕だけはしっかり確保して寝転んでいたし、それは当たり前のことなのだ。

私達は、少し身体が不自由になってきた時、その人の生活を型にはめようとしたがる。
自分ではあまり動けないだろうから、きちんと環境をセッティングしてあげなければならない、
見た目的にも何かで保護していないといけないんじゃないかと心配になってしまう。
しかし、実際は、”何もない”ことって楽しめるんじゃないだろうか。
そよそよとそよぐ風を受けながら、そんなことを考えた。


ふと周りを見渡すと、6畳一間の間取りにしては、やけに広く感じた。
そよそよと涼しい風が入ってくる、開放された窓の外には、
どこまでも遠く、五剣山や瀬戸内海が、鮮やかに存在していた。
何か広く感じたのは、おそらく、これだろうか。

畳と過ごす

「わぁ、ええ眺めやね。」
「ほんやのう、今日はええひよりやなぁ。
 もうすぐ梅雨が来るけんど」

たわいもない話であるが、
どこから来たのかとか、家族はどうとか、
しばらく話をすることができた。


ふと立ち寄った場所での、素敵な出会い。
誰かと関わることは、やっぱり楽しい。

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